“その時”では遅い相続の話

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第8回
効果的な相続税対策とは

相続税を払う件数の割合はどのくらいかご存知でしょうか。ここ数年、亡くなった人は年間100万人強で、相続税が課税された件数の割合は約4%です。
相続税には基礎控除という非課税枠があり、その金額は5000万円+(1000万円×法定相続人の数)です。将来はこの基礎控除額を減額しようという動きがありますが、現状では、遺産がこの額を超えていなければ相続税はかかりません。しかし、相続税がかかる人にとっては、少しでもその額を低く抑えたいと思うのではないでしょうか。そこで、今回は、とっておきの相続税対策をご紹介することにします。

特例を活用して、相続税を少なくする。

相続税には、「配偶者の税額軽減の特例」(配偶者は、たいていの場合相続税はかからない)や「小規模宅地等の特例」(自宅などの土地の評価は大幅に安くなる)という特例があります。
しかし、相続税の申告期限である10ヶ月以内に遺産分割がまとまっていないと、原則としてこれらの特例は使うことができません。このため、遺産分割がまとまらないと、相続税が高くなってしまうことがあるのです。つまり、迅速に財産を分けることができれば、相続税の特例が使えるため、結果的に相続税が少なくなるわけです。

生命保険の非課税枠も有効。

言うまでもないことですが、相続税がかからない人には、相続税対策は必要ありません。しかし、忘れてはならないのは、相続対策には相続税対策だけでなく、遺産分割対策相続手続対策が必要になるということです。
そこで着目してほしいのが生命保険です。生命保険には非課税枠があるので、相続税対策に有効なだけでなく、財産を渡したい人を死亡保険金受取人に指定することによって、円満な遺産分割にも役立つのです。しかも、預貯金と違いすぐに受け取ることができるため、相続手続きも比較的簡単にできるというメリットもあります。

「名義借り」は課税対象になる可能性が高い。

相続税の節税のために、配偶者や子ども、孫に贈与を考えている人は多くいます。しかし、亡くなった人が、配偶者や子ども名義の通帳や印鑑を保管していた場合は、贈与したとは言えないでしょう。それは単なる「名義借り」で、実質的には亡くなった人のものとして、相続税の課税対象となる可能性が高くなります。また、金融機関も名義借り預金は受け付けていません。
そもそも、相続税がかからないのであれば、そのような対策は必要ないでしょう。もし、相続税対策としてではなく、愛情のしるしとして財産をあげたいということであれば、遺言や生命保険などで渡すことを検討するとよいでしょう。

相続対策の切り札は、財産を全部使うことです。

財産を全部使ってしまえば、相続税を納める必要もなく、相続争いも起こりません。ですから、これが究極の相続対策と言えます。
しかし、この方法には大きな欠点があります。それは、亡くなると同時に財産を使い切ることができないという問題です。財産を使いきってから長生きすることもありますし、使い切る前に亡くなってしまうこともあるのです。
ただし、年金保険の終身年金を活用することによって、その問題を解決することができます。終身年金は、生きている間はずっと受け取ることができるからです。しかし、これにも欠点があります。それは、お金を使い切ることができても、自宅などの不動産が残ってしまうのです。そのような場合には、不動産を処分し、有料老人ホームに住むという選択もあります。

【図表】相続対策とは

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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