“その時”では遅い相続の話

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第9回
相続で揉めるケースが急増している

財産が少ないから、家族の仲がよいから、相続で揉めることはないと思っている人は多いと思いますが、そうとは限りません。下表に示したように家庭裁判所への相続関係の相談件数は、平成22年度までの10年間で、約2倍の18万件弱に急増しています。遺産の大きさで見るとどうでしょうか。家庭裁判所の調停・審判の統計によると、遺産額が5000万円以下のほうが、5000万円超より約3倍多く揉めています。そして、5000万円以下の件数は年々増加しているのです。今回は遺産相続で揉める根本的な要因を2つ挙げましょう。

二次相続はラストチャンスのため
揉めやすいと言われています。

家庭裁判所での調停・審判や相続の相談が必要になるということは相当深刻なケースとも言えます。そこまではいかなくても、相続で揉めたとか、揉めないまでも相続をきっかけに、仲のよかった家族がギクシャクした関係になることはよくあります。そのようなケースが相続相談件数の数倍あると考えると、相続発生件数(年間100万件強)の大半において、相続は円満かつスムーズには進められていないと言ってもいいのではないでしょうか。

相続においてある人の相続を一次相続といい、その人の相続後の配偶者の相続を二次相続といいます。例えば、夫婦のうち、夫が亡くなり、妻と子供達で相続するのが一次相続で、その後、妻も亡くなって子供達が相続するのが二次相続です。そして、相続において一番問題になりやすいのが、この二次相続です。なぜなら、二次相続は親という重しがなく、子ども同士、兄弟姉妹同士の話し合いになるため、とてもまとまりにくくなるからです。

いったん他の兄弟姉妹が相続したものは、自分がもらえることはまずありません。つまり相続できるラストチャンスとも言えるのです。

子ども同士は仲がよくても、
その配偶者が原因で揉めることもあります。

自分の親の相続のときに、実の兄弟姉妹が多くもらうことは納得できても、配偶者の親の相続のときに、配偶者の兄弟姉妹が配偶者よりも多くもらうことには抵抗があるという人は意外に多くいます。相続人の配偶者は、相続の権利のない第三者ですが、気持ちは相続人ということが多く、それが原因で揉めることがあるのです。

例えば、結婚して子どもを育てながらマイホームのローンを返済している時期に、配偶者の親が亡くなり、配偶者が実家の家族のそれまでの歩みを考慮して、「遺産分けは少なくていい」と言ったとします。しかし、相続人の配偶者はそれに納得できず、法定相続割合以上に欲張るわけではないが、法定相続割合通り、もしくは割合以下でも、少しでも多く財産をもらいたいと主張するかもしれません。そうなると相続人は、自分の兄弟姉妹と配偶者の間で板挟みになり、相続の話し合いが難しくなるのです。

【図表】相続関係相談件数の推移

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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