“その時”では遅い相続の話

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第10回
「遺産を受け取らない」という方法について考えよう

遺産には金融資産だけでなく、自宅などの不動産、そしてローンなどの負債もあります。今回は、「遺産を受けとらない」という方法について考えます。

自宅を含めた遺産は、ボーナスや
退職金より多いのではないでしょうか。

高齢者ほど金融資産や不動産などの実物資産を多く所有しており、高齢者(70歳以上)の世帯の平均資産残高は約6,150万円(負債は約190万円)という統計もあります。
相続財産額は、普通の人のボーナスはもちろんのこと、退職金よりも多くなる可能性は十分にあるのです。

また、相続税の統計によると、相続財産の半分以上は自宅などの不動産です。そのため、分けにくくて売りにくいという問題もあります。

高齢者が金融資産の運用を考える際は、少しでも減らさず増やすということだけでなく、不動産やローンも含めた資産と負債全体について、相続税を支払い、円満に分けるためにどうしたらよいかということを、総合的に検討する必要があります。

住宅ローンは払い終えているから安心だと思っていると
意外な落とし穴が…

何も手続きをしない場合、相続人は亡くなった人の「プラスの財産」も「マイナスの財産」も無限に引き継ぎます。これを「単純承認」といいます。
そこで、債務が財産よりも多い時は家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをとることができます。相続人としてすべての権利を放棄することで、借金の返済義務を逃れることができるのです。

気をつけないといけないのは、遺産分割協議で何も相続しないことにして、事実上の相続放棄をする場合です。確かに、「遺産は受け取らない」のですが、これだけですと借金などの債務は相続してしまうので、注意する必要があります。

そして、実はもう一つ大切なポイントがあります。「父親は住宅ローンを完済しているから問題ない」と思っていたら、実は知人の「借金の保証人」になっていたというケースがあります。この「保証債務」も、相続放棄をしない限り相続することになります。

また「借金」などの債務は、相続財産を計算する際、相続財産から差し引くことはよく知られています。しかし怖いことに、連帯保証などの保証債務は、相続発生時、既にその履行を求められているなどの一定の条件を満たしている場合以外は、原則として差し引くことができません。
相続放棄の手続きは、原則として相続開始後3ヶ月以内ですので、いろいろと慎重に調べないといけないのです。

相続争いは、「勘定問題」が
「感情問題」になってしまいます。

他人との争いより、家族や親族同士による相続争いのほうが、決着がつきにくくなります。なぜなら、もはや損得の問題ではなく、感情の問題になってしまうからです。「お金の問題ではなく、気持ちの問題だ」と言われてしまうと、どうしようもありません。
仮に法律的に正しく裁判で勝ったとしても、多大な時間と費用がかかることもあり、たいていの場合はお互い痛み分けに終わります。「法律」より「効率」を考えることも必要です。

勘定(遺産分割)の問題が裁判で決着しても、感情の問題は永遠に解決せず、一番大切な家族の絆(きずな)が失われてしまうこともあります。
「取り合う」のではなく「譲り合う」こと、場合によっては「受け取らない」ことも含めて考えることが、みんなのためであり自分のためにもなると覚えておいてください。

【図表】相続財産の内訳

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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