“その時”では遅い相続の話

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第1回
元気なうちに遺言を書いておこう

財産が多くても少なくても、家族の仲が良くても、相続では何かしらの問題が起こるといわれています。残された者が少しでも安心できるように、前もって準備することが肝心です。第1回は遺言について説明します。

遺言は遺書と違います。遺言は保険とよく似ています。

遺言は法的効力を持たせるため、所定の要件を満たした書式で書かれることが必要なのに対し、遺書は元々、法的効力を求められていないので書式の制約はありません。一般に遺言は元気なときに書くもので、遺書は亡くなる間際に書くものです。だから、遺言は遺書と違って縁起が悪いものではありません。遺言も保険も万一亡くなったときの備えです。そして、保険に入れば必ず死亡保険金受取人を指定します。遺言も自分が亡くなったときに財産を受け取る人を指定できます。保険に入るときに縁起が悪いから入らないとか、元気だから入らないという人はあまりいません。保険は元気でなければ入れないし、遺言も元気だからこそ書くことができるのです。

遺言は元気なときに気軽に書くことが重要です。

遺言は、「まだ元気だから今は必要ない」、「これからも財産を使ったり、増えたり、気持ちが変わったりすることもあるので、まだ早い」と思っている人は多いと思います。しかし、病気になってから書く遺言は、あまり気持ちの良いものではありません。また、認知症になってからでは遺言を書くことができません。書いても意思能力がないと判断されれば無効になってしまいます。財産が増えも減りもしない状況を待っていれば、亡くなる間際しかありえません。遺言は何度でも書き直すことができますので、元気なときに気軽に書くことが重要です。

遺言は愛する家族へのラブレターです。

遺言には財産の配分だけでなく、財産を分けた理由家族全員への感謝の気持ちや愛情などを書くことができます。これが書かれていることによって、残された家族に書いた人の気持ちが伝わります。そして、財産だけでなく、愛情も相続することができます。このような言葉を付言事項といいます。付言事項は必ず書かなければいけないわけではありませんし、書いたからといって法的に効力があるものではありません。しかし、このような言葉が書かれていれば、残された家族は書いた人の想いを生かして、遺言通りに財産を分けたいと思うことでしょう。 以下に、付言事項の例をご紹介します。

私は、長年に渡り苦楽を共にし、私に尽くしてくれた妻○○に感謝しています。苦労を共にしながら育ててきた2人の子供もそれぞれ家庭を築き、幸せな様子を見るにつけ、安心している次第です。

私の願いは、家族全員の安泰と家族全員が仲よくしてくれることです。
私亡き後の妻の生活を考えた結果、このような内容となりました。

長男△△には、お母さんのことをよろしくお願いします。

長女□□は、少ない財産分けとなりましたが、良きご主人にも恵まれ、幸せな生活を送れていることに感謝し、今後も兄を助け、当家を盛りたててください。

終わりに、すばらしい家族に恵まれたことに感謝し、ありがとうの言葉を残します。

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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