“その時”では遅い相続の話

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第3回
遺言作成時には、「遺留分」に配慮しよう

最近は、遺言を書くメリットが多くの人に知られるようになってきました。その結果、自筆証書遺言の検認件数や公正証書遺言の作成件数(図表参照)は、増え続けています。遺言は相続時に役立つのですから、この傾向はとてもいいことだと私は思います。
ただ、遺言の内容が良くなければ、逆に相続で揉める要因になります。そこで、今回は遺言を書くときや書いた後の注意点について説明しましょう。

遺言を書いた人が実行することはできません。だから、遺言執行者の指定を。

遺言は書くだけでは意味がなく、実行されてはじめて遺言の効果が発揮されます。どんなにすばらしい遺言であっても、実行する人を指定しておかないと、遺言通り実行されない可能性があります。
なお、遺言を実行する人を遺言執行者といいます。遺言執行者には法定相続人もなることができます。しかし、遺言執行者は、さまざまな面倒な相続手続きを行わなければなりません
そこで、弁護士や信託銀行などの専門家に遺言執行者になってもらうことも一つの方法でしょう。

相続争いを防ぐための遺言が、争いの原因になったら意味がありません。

遺言の増加に伴い、遺言が原因で争いになる事例も増えています。法定相続人(兄弟姉妹を除く)には遺留分という、財産を最低限受け取ることができる権利があります。この権利が行使されて、争いになることがよくあるのです。
遺言は、法定相続分とは関係なく、書く人の意思で自由に財産を分けることができます。遺留分を侵した分け方の遺言でも、法的に無効になるわけではなく、法定相続人が納得すれば問題はありません。しかし、遺留分を侵された人が納得できないときは、遺留分減殺請求をしてその分を取り戻すことができるので、争いになるのです。
したがって、遺書の作成は、遺留分にも配慮しながら、残された家族みんなが納得できるように進めていくことが肝心です。

状況が変われば、遺書を書き換える。書きっぱなしはトラブルの元。

遺言を書くと、心配がなくなり安心できるため、長生きするといわれています。
しかし、どんなにすばらしい遺言であっても、書きっぱなしでは駄目です。長生きすれば、財産が増えたり減ったり、財産の内容や相続人が変わったり、税制や世の中の状況も変わります。
そのため、遺言を書いた後も定期的に見直しすることが重要です。少しぐらい財産が増えたり減ったりしても、書き換えなくてもよい方法はありますが、自宅を売ったり、配偶者が先に亡くなるなど状況が大きく変われば、書き換える必要があるでしょう。そのままにしておくと、トラブルになることがあるからです。

【図表】公正証書遺言の件数推移

なお、本文は特定の商品などの勧誘を目的とするものではなく、
文中の意見にあたる部分は筆者の見解であり、三菱UFJ信託銀行を代表するものではありません。

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