第7回
異国から移住してきた山野草たち
2012.04.10 [西原 升麻]
春になれば、野山はもちろん、その辺を歩いてもいろいろな花に巡り会えます。しかし、よくお目にかかる花の中には、実は異国からの訪問者であったということがあります。
「帰化植物」という言葉をご存じでしょうか?今でも「帰化する」という言葉をたまに聞きますね。簡単にいうと、「外国の人が日本国籍を取得して、法律上日本人になること」で、例えば大相撲力士だった曙や武蔵丸、また東日本大震災を契機に日本国籍を取得したドナルド・キーン氏(米コロンビア大名誉教授)などがいます。
植物の場合は法律で認められていて、日本国籍を取得したわけではありません。日本へ勝手に住みついてしまったのです。もっとも植物たちにしてみれば、好きで来たわけではないのでしょうが。
種が人や物にくっついて、日本の地で芽生えたものもあるかもしれませんが、多くは人間が観賞や商売を目的に持ち込んだものだといわれています。すくなくとも中世以降に来日して住み着き、帰化した植物のほとんどはそうでしょう。
実は帰化植物の数は多く、なんと1200種以上もあるといわれています。ですから、在来種だと思っていた植物が実は外来種だった、という場合も案外あるのです。
- おなじみセイヨウタンポポです
- オオイヌノフグリ。これも春の定番です
シロツメクサですが、クローバーという名前のほうがよく知られています
有名なところでは、セイヨウタンポポ。わざわざ「セイヨウ」がついているのでお分かりだと思いますが、帰化植物です。その辺でよく見られるタンポポは、ほとんどこのセイヨウタンポポ系です。
また、以前書いたホトケノザといつも競うように咲いているオオイヌノフグリも、帰化植物です。
河原などでよく見られるシロツメクサやムラサキツメクサなども帰化植物です。また、大正ロマンとして今でもよく歌われる竹久夢二の「宵待草」に登場する花、マツヨイグサはいかにも日本的な感じのする花ですが、実はこれも帰化植物です。
マツヨイグサ。河原でよく見られる似た花は別種の場合が多いようです
日本の植物にも栄枯盛衰がありますが、帰化植物の場合はもっと激しく、波乱の人生(草生?)を送るものも多いようです。このマツヨイグサも、江戸末期に日本へ持ち込まれたものが空き地などで大繁殖したあと、別の帰化植物に追われて激減し、今ではめったにお目にかかれないほどです。
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