名医に聞く

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第35回
更年期障害治療は医師選びと教育が大事

多様で個人差が大きい症状。理解する医師は少数派

40~50代女性の多くが経験する更年期障害。
更年期とは、閉経をはさんだ前後10年を指す。
多くの女性は、50歳前後で閉経を迎えることから、おおむね45~55歳が更年期にあたる。
この時期に、卵巣ホルモンの一種であるエストロゲンが徐々に枯渇する過程で起きてくるさまざまな症状が「耐えられない」と感じる状況を更年期障害と呼ぶ。
症状があっても、自分が耐えられる場合は更年期障害とはいわない。
自己申告制の病気だ。

代表的な症状は「のぼせ」「ほてり」「イライラ」「発汗」などだが、ほかにも動悸(どうき)、尿漏れ、ドライアイ、口の渇き等々、実に多彩な症状がある。
「更年期障害は、女性ホルモンが枯渇することによって起こってくるものです。
更年期および更年期以降の症状は本当に多様で、のぼせやほてり、イライラ、不眠、発汗だけではありません。
微小血管狭心症、白内障、動悸、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、高血糖、尿漏れ、頭痛、動脈硬化、骨粗しょう症…すべてに女性ホルモンであるエストロゲンの枯渇が関与しています」
と解説するのは天野惠子医師。

日本における性差医療の第一人者であり、更年期障害の名医として知られている。
自身も壮絶な更年期障害体験をしている天野医師は、この病気を取り巻く日本の状況を次のように嘆く。
「なぜ起こるのか、どういう症状があるかといった情報があまり知られていないのです。そのため、女性たちは調子が悪くなると、「これは絶対に病気だ」と、ドクターショッピングを始めます。
更年期を迎えた女性の体の変化をよく判っている医師が、あまりにも少なすぎるのです」

確かに、重い更年期障害で苦しむ女性に話を聞くと「どの病院でも検査しましたが、何でもありませんでしたよと言われた」と吐露する人が少なくない。
次々と襲う不調に耐えるだけでも大変なのに、原因はわからず、治療もできず、さらに周囲から「怠けているのではないか」と疑われる辛さは、経験者でなければ理解できないかもしれない。

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