文化とアートのある暮らし

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第15回
「秋の芸術鑑賞に現代の音楽を」

11月1日に、東京芸術劇場開館25周年記念コンサートが行われます。
「ジョワ・ド・ヴィーヴル - 生きる喜び」というタイトルで、このプログラムは「祈り」「希望」「愛」の3章からできています。吹奏楽が芸劇ウインド・オーケストラ、管弦楽が東京交響楽団で鈴木優人さんの指揮に多彩なゲストの演奏で、オルガンと歌 / ダンスと即興演奏による「祈り」、若い作曲家・演奏家とともに奏でる吹奏楽による「希望」、そして20世紀最大の音楽作品であるO.メシアンの「トゥーランガリーラ交響曲」をプログラムに入れた「愛」と、この3つの壮大なテーマに加え、W.A.モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」やI.ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」まで大胆なかたちで選曲されており、これまでにあまりない組み合わせでダンスを鑑賞し、合唱があり、即興演奏まで聞くことができます。

その公演に先駆けて第2部「希望」で演奏が予定されている作曲家、小出稚子さんのレクチャーが東京芸術劇場内にて行われました。小出さんは、東京音楽大学・大学院をご卒業後、オランダのアムステルダム音楽院、デンハーグ王立音楽院に留学され、その後はインドネシア国立芸術大学 スラカルタ校にてジャワ・ガムランの理論を学ばれたり様々な楽器の響きや音楽のありかたを海外で学ばれ、今年になって本格的に日本に帰国されたようです。

今回私が参加させていただいたレクチャーは、その留学時の体験談とこれまでに作曲された作品の紹介が行われました。小出さんは大学院在学中という早い時期から芥川作曲賞を受賞、さらに日本音楽コンクール作曲部門第2位及び聴衆賞、出光音楽賞、アリオン賞などの輝かしい受賞歴をお持ちでこれから日本を拠点にしたご活躍が非常に楽しみです。

留学時の体験談ではとても印象深いお話をされたのですが、作曲作品を発表する際、ヨーロッパは言葉でのプレゼンに1時間、そして質問には当然のように英語で応えねばならず曖昧な返答ができないとのことでした。逆に日本では言葉でのプレゼンはあまり必要とされず、作品の質がかなりの割合で重視されるとのことで作品が良ければ言葉で語る機会はない場合が非常に多いようで、その違いがとても面白いですね。また、アイデンティティの意識があり、西洋クラシック音楽をヨーロッパの人と同じ立場で接することはできないこと、日本に生まれオランダとインドネシアで暮らしたというバックグラウンドは自然と書く音楽に現れるというお話も。

作品紹介では「ChOcoLAtE チヨコレート」 (2008)、「琥珀」(2011) などを含めたたくさんの作品を聴くことができました。これらの作品は音楽外の様々な世界を「音楽」に変換することによって作られたものです。また、既にある音楽作品を元に再構築した作品「恵比寿」(2013)、「ハイカランナーズハイ+」(2013)や、 新しい伝統芸能の在り方に挑んだ作品「恋の回旋曲」(こいのろんど) (2013)など、音楽を創作するうえでのいろんなパターンの存在をお話され、創造力の宝庫とも思える内容が展開されました。


-小出さんが作品に取り入れている楽器たち-



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