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第16回
〈痛風〉 一生の病気。根気よく治療することが大事

第二次大戦後に急増 患者は男性が95%を占める

痛風は、欧米では非常に古い病気だ。
エジプトで発掘されたミイラの関節の中に尿酸塩を見つけたという報告があり、紀元前には、医学の父と呼ばれたヒポクラテスの文献にも登場するほどだ。しかし、第二次世界大戦以前の日本では、ほとんど見られなかった。
それが戦後、特に経済復興して豊かになり、食生活が欧米化してアルコール摂取量増えてきた1960年以降急激に増加し、現在、痛風患者は80万人から90万人いるといわれている。

「ただし、痛風の前段階である高尿酸血症に罹っている人の数はその10倍近くいるだろうといわれているので、80万人だとしたら800万人、90万人だとしたら900万人の予備軍が存在すると推計されます」(細谷医師)

患者のおよそ95%は男性であるという点も、痛風の大きな特徴である。

「女性は、女性ホルモンが腎臓からの尿酸の排泄を非常に良好にする作用を持っているおかげで、高尿酸血症になりにくく痛風にもなりにくいのです。
ただ閉経期以降は女性ホルモンの分泌が徐々に低下してくるので、70歳を過ぎると、血清尿酸値の男女差もなくなるといわれています。女性でも尿酸値が上がり、痛風になる人が出てきます。これが5%以内ということになります」(同)

「回帰性リウマチ」「偽痛風」など鑑別がむずかしい病気もある

診断は、痛風発作がでているときに血液検査で尿酸値を調べる。

「ほかにも皮下にできたこぶみたいなものや関節液を調べて、尿酸炎結晶が証明されれば痛風という診断を下します。それが確実な診断方法ですね。もちろん関節炎の特徴、高尿酸血症の有無なども、充分診断の根拠となります」(同)

いずれにしても、単関節炎で足の親指の付け根であるなど、比較的特徴的な関節炎を起こして受診した場合、診断は容易だという。
とはいえ、「関節リウマチ」「回帰性リウマチ」「偽痛風」「化膿性関節炎」など間違いやすい病気も決して少なくない。

「関節リウマチの場合は、痛風が単関節炎なのに対してリウマチは多発性関節炎(複数の関節が痛む)ですし、男性がすごく多い痛風に比べて、リウマチは女性に比較的多いなど、大きな違いがあります。
一方、リウマチの亜系であるといわれている回帰性リウマチは、痛風に似た関節炎を起こすので非常に間違いやすいです。
また偽痛風もピロリン酸カルシウムという物質が関節内にたまって炎症を起こすのですが、やはり痛風と似た症状を呈します。
回帰性リウマチも偽痛風も、痛風と似てしばらくするとよくなったりするので、痛風と鑑別しにくい病気です」(同)

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