名医に聞く

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第4回
〈腰椎椎間板ヘルニア〉 薬物療法は中枢神経をコントロールする薬へ。手術療法は超低侵襲のPEDに注目!

8ミリの傷、局所麻酔で行うPEDは1日の入院で治す

治療において手術が適応されるのは、次のような場合だ。

●保存的治療を3カ月間行っても痛み、痺れ、筋力低下が改善されず、
日常生活に支障がある
●我慢できない強い痛みのために日常生活が著しく制限される
●尿意がわからなくなって失禁したり、肛門が痺れて締りがなくなった

手術療法は、ヘルニアを直接切除する手術と、間接的にへこませる手術の2つに大別されるが、後者について出沢医師は、

「椎間板ヘルニアのレーザー治療は殆ど効果が認められている手技ではありません。多くの方がレーザー治療に高額のお金を支払い改善されずに外来にこられていますがレーザーという響きで治療を受けられている方に警鐘をならします」と、ブログにつづっている。

そんな出沢医師が進めるのは、直接切除する手術の1つ、内視鏡による腰椎椎間板ヘルニア摘出術だ。

「MED(メド:内視鏡腰椎椎間板摘出術)とPED(ペド:;経皮的内視鏡腰椎椎間板ヘルニア摘出術)という2つの手術法があります。MEDは全身麻酔をかけ16mmの傷から内視鏡などの道具によって行う手術です。入院日数は7日前後。PEDには向かない、腰部脊柱管狭窄症のように脊髄や馬尾の神経が圧迫狭窄されている場合におきる椎間板ヘルニアの摘出が可能です。一方PEDは傷の長さがMEDの半分。面積は1/4の大きさのなかで行うことができます。非常に狭い所に入ってヘルニアを除去したり、局所麻酔で行うことができるので、入院日数が1日で済みます。また局所の痛みが少ないため、早めの社会復帰も可能です。最速2、3日で復帰している方もいます」(同)

ちなみにPEDは、日本では出沢医師が2003年に導入し、もっか普及と改良を進めている。PEDならば、寝返りさえも困難だった患者が、局所麻酔で医師と会話しながら手術を受け、その3時間後には痛みから解放されて歩行することが可能なのだ。

さらに再発率が低いのもPEDの特徴だ。

「椎間板ヘルニアは手術をしても5~10%は再発します。というのも椎間板には再生能力がないので、手術をした痕はふさがりません。穴が開いている状態のままなので、髄核が再び飛び出してきてしまうのです。PEDなら穴も小さいので、再発率も当然減ってきます」(同)

とはいえ高度な技術を要するので、できるようになるまでには長時間の訓練が必要だ。そのため日本では、安心してPEDが受けられる施設はまだ6カ所しかないという。今後の普及が望まれる。

名医のプロフィール

腰椎椎間板ヘルニアの名医

出沢 明(でざわ・あきら)

帝京大学医学部付属溝口病院 副院長補佐 整形外科科長 教授
1980年千葉大学医学部卒業。国立横浜東病院整形外科医長、千葉市療育センター通園センター所長、帝京大学医学部整形外科講師、帝京大学溝口病院整形外科助教授を経て、 2004年から同大学教授、整形外科科長。2005年より同病院副院長補佐。
専門分野は、脊椎・脊髄外科、股関節外科、電気生理学、最小手術侵襲。2003年に低侵襲を極める経皮的内視鏡腰椎椎間板ヘルニア摘出術=PEDを導入、高い治療実績をあげている。またPED研究会を立ち上げ、研究・普及活動にも努めている。

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