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第3回
〈尿路結石〉 治療の主流は「日帰り」も可能な衝撃波破石術(ESWL)

安全を最優先し、あえて入院させるという選択も

尿路結石の診断は比較的簡単と黒田医師は言う。

「もちろんレントゲンに映らない特殊な石もあることにはありますが、一般的には単純なレントゲン検査で判ります。それとCTスキャンと超音波ぐらいで十分に診断はつきますし、なんといってもほとんどのかたは、疝痛というはっきりした症状がありますよね。疝痛を起こして救急車でお越しいただくケースが多いですから。それから血尿がでるとかね。わかりやすいです」

そして治療は・・・

「ガイドラインでは、尿管(上部・中部・下部がある)の下部に出来た結石に対しては、内視鏡を使って結石を摘出する体内砕石術(経尿道的尿管砕石術)を適応するよう定めています。しかし内視鏡は麻酔が必要ですし、細い尿管に内視鏡を挿入することで狭窄が起こる危険があります。ですので、私の病院では結石破砕装置を用いて、尿管のいずれの部位に対しても体外衝撃波破石術(ESWL)を行っています。体に傷をつけることなく、体の外から衝撃波をあて、尿路結石を細かく砕き、尿と共に排泄する治療です。

ESWLは保険が適応されますし、原則として麻酔の必要がありません。また、退院後はすぐに職場復帰でき、高齢者や心臓病、糖尿病の方も安全に治療できるきわめて低侵襲な治療法です」(同)

ただし、破砕装置によっては、あまり石がよく割れないものもあるらしい。

「実は装置のパフォーマンスには非常に大きな差があります。私のところで使用している装置は高性能ですが、あまり割れない装置だと、衝撃波が患部へ届かず、治療効果が下がる場合もあるようです。

それから非常に大きな石を、結石破砕装置で治療するときは、やはり工夫が必要です。場合によってはある程度麻酔をかけて、安全性を高めるために尿管ステントという管を、入れておかないとならないケースもあります。本当にケースバイケースです」(同)

ESWLは低侵襲で安全性も高いため、日帰り治療を行っている病院は多いが、黒田医師のところでは最低1日は入院させる。

「なぜかというと石を壊すことによってトラブルがまったく起こらないとは断言できないからです。何かが起こる可能性は常にある。それに結石破砕は麻酔こそしませんが、イライラを抑えるような精神的な薬を使用するので、それが醒める際の副作用もあります。

破砕した後には、尿の量も増やさないといけません。尿を増やすには、水をたくさん飲めばいいと思いがちですが、それで増やせる量は限界があります。腸管の具合が悪ければ吸収される量も少なくなって、みんな下痢になってしまう。ですから、私のところでは、水分摂取も積極的にしてもらいつつ、点滴を行います」(同)

名医のプロフィール

尿路結石の名医

黒田 俊(くろだ・しゅん)

医療法人 森と海 東京 黒田病院 院長/医療法人 森と海 理事長
昭和27年(1952年)生まれ。
1979年 東京慈恵会医科大学卒業。同大学外科研修医、聖マリアンナ医科大学助手、聖マリアンナ医科大学医長(泌尿器科)、聖マリアンナ医科大学非常勤講師(泌尿器科)、黒田病院副院長を経て、2004年より現職。
前立腺肥大症はじめ、排尿障害に関する疾病の治療で高い評価を得ており、2010年の手術件数は93件。また、尿路結石の治療にも定評があり、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は過去15年間に3155件実施。

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