名医に聞く

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第1回
〈アルツハイマー病(認知症)〉 診断法はあと5年、治療法は10年で確立するかもしれない

現在の治療法――
“執行猶予”は1年から2年

認知症には「治るもの」と「治らないもの」があり、「アルツハイマー病」は後者の代表だ。脳や脊髄にある神経細胞のなかで、認知機能に関係する細胞等が徐々に障害を受けて脱落してしまう「神経性疾患」の一種で、残念ながらまだ原因はわかってない。また、認知症の約半数を占めており、治すことはできないまでも、出来るだけ早く発見し適切な治療を行うことで、症状を改善し、病気の進行を1年から2年遅らせることもできる。

治療の中心は「ドネペジル」という薬の使用だ。出来るだけ早く使用を開始すれば、それだけ軽い段階を維持出来るー―治すことが出来ない進行性の病気だけに、悪化する前の“執行猶予”のような期間はこの上なく貴重だ。

それにアルツハイマー病の症状は、認知機能の低下(物忘れ)だけではない。周辺症状と呼ばれる、落ち込みやイライラ、徘徊や不眠、譫妄(せんもう)といった症状があり、それらのほうがむしろ、毎日の生活におよぼす影響は大きい。介護する家族にとって負担になるのも、実は周辺症状のほうが深刻だったりする。

「周辺症状は、専門的な治療によってだいぶ改善することが出来ます。そちらを治せば、生活が成り立たち、人生を楽しむこともできるのです。ですから、アルツハイマー病の診断を受けても、絶望しないで欲しい」と順天堂大学の新井平伊教授は話す。

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