名医に聞く

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第1回
〈アルツハイマー病(認知症)〉 診断法はあと5年、治療法は10年で確立するかもしれない

治療の未来――
10年ごとに大きな動きがある

そして研究は着実に進んでいる。

「たとえば原因は、アミロイドβ蛋白という物質が、脳内に異常に蓄積されてしまうせいだということが解明されてきました。そこで今世界では、この原因物質に介入することで、病気の進行を止めようとする次世代治療薬の開発が進められています」(同)

原因物質の解明は、治療よりも一足先に、診断に対して画期的な進歩をもたらした。

「従来は、CTやMRI検査で脳の萎縮を調べ、さらに脳の血流を調べるスペクト検査や、酸素やグリコースの消費量から脳の活動を見るペット検査で診断していましたが、昨今はアミロイドβ蛋白がどれくらい脳に蓄積されているかを見るペット検査でその溜まり具合が画像として映し出すことができるようになりました。これは精度の高い早期診断に大変役立つと期待されています。」(同)

アルツハイマー病は早期の診断・治療開始が非常に重要だが、患者や家族が異常を感じて医療機関を受診しても、病気を発見できないケースが多く問題になっている。原因物質が一目瞭然の検査法が確立し、普及すれば、軽度のうちに治療を開始できる患者が増えると新井医師は期待している。

一方、治療法についても、アミロイドβ蛋白を脳内から減らす研究が盛んに行われている。

「診断のほうは5年、治療法は10年ぐらいの間に確立するかもしれません」(同)

中高年と話していると、「最もなりたくない病気はアルツハイマー病」という人が少なくない。人格の崩壊に至る病はある意味、死ぬよりも怖いのだ。そのアルツハイマー病が、あと10年ぐらいのうちに、怖くない病気になろうとしている。

名医のプロフィール

アルツハイマー病の名医

新井平伊(あらい・へいい)

順天堂大学医学部精神医学講座教授。
昭和28年(1953年)生まれ。
1978年順天堂大学卒業。同大学院、東京都精神医学総合研究所主任研究員、順天堂大学医学部講師を経て、1997年より現職。
専門はアルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学。1999年に我が国で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設した。
主な著書に、『アルツハイマー病のすべてがわかる本』(講談社)、『最新アルツハイマー病研究』『アルツハイマー病のクリニカルパス』(ともにワールドプランニング)がある。
日本老年精神医学会理事長、日本認知症学会理事、国際老年精神医学会(IPA)理事。
2009年 『アルツハイマー病研究者 世界トップ100(2009.3月号)』において世界38位に選出。

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