名医に聞く

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第27回
水虫。誰もがかかる、うっとうしい病気

温泉宿での朝風呂は感染リスク極大

さらに水虫には、たとえ治ったとしても、しばしば再発してしまうという問題もある。

「再発の最大の理由は、治療が中途半端だから。最低1カ月間は塗り続けなければならないのに、大抵の患者さんは、せいぜい2週間ぐらいでやめてしまう。また、患者さんはかゆみなどの症状がある所にしか塗り薬を使用しない。症状がない所も含め、指の間から足の裏全体に塗り残しなく毎日塗ることが大切。
もう1つは家族間での感染です。
家族に1人でも水虫の人がいれば、家じゅうに菌をばらまいている可能性がある。
自分一人だけ治療しても、ほかの家族が治っていなければ、再感染の可能性はいくらでもあるわけです。」

しっかりと治し、再発させないようにするには、薬を1ヶ月間きちんと塗り続け、その後、足を清潔に保ち、洗った後は乾燥させること。同居家族みんなで治すこと。そしてトイレスリッパやバスマットは清潔に保ち、できれば共有は避けるのがおススメだ。
そして薬は、症状があるところだけでなく、広く、足の指の間や足裏全体に塗ることが大切である。

…と、書くのは簡単だが、バスマット等を個別にするのはかなり面倒だし、水虫薬を足の裏全体に塗るのも、なんとなくもったいないような気になる。
きちんと治すには、ちょっとした覚悟が必要だ。

また、渡辺医師は、次のようにも教えてくれた。
「温泉や銭湯が好きな方は、水虫要注意です。温泉場のバスマットには100%白癬菌がいますからね。
温泉宿に泊まると、宿を出る前に朝風呂に入りますよね、あれは非常にリスキーな行為です。
半乾きのまま靴下を履き、靴を履いてそのまま長時間過ごすと水虫になります。白癬菌は通常は24時間以上足に付着していないと、皮膚に侵入しにくいのですが、軽石等でこすってかすかでも傷がついていると、傷口から12時間で白癬菌は皮膚に侵入し、水虫になってしまいます。
温泉で朝風呂を使ったら、ヘアドライヤーでしっかり足を乾かしてから靴下や靴を履くようにするか、サンダル履きでいたほうがいいですよ」

風呂上がりにヘアドライヤーで足を乾かすというのも面倒そうだが、渡辺医師は、ゴルフ場で風呂に入った後も、ヘアドライヤー乾燥をしっかり行えば、水虫知らずだという。

昔は水虫といえば「オヤジの病気」と思われていたが、働く女性が増え、一日中靴を履いて過ごす女性が増えたことに比例して、女性の水虫患者が、特に若い人の中で増えている。

男性も女性も、水虫のような症状を発見したら、すかさず皮膚科を受診し、水虫と診断されたら、家族間感染を防ぐ手立てを講じ、薬を最低一ヶ月間きちんと塗り、水虫と縁のない生活をしっかり取り戻そう。

名医のプロフィール

水虫の名医

渡辺晋一医師(わたなべ しんいち)

帝京大学医学部皮膚科教授、帝京大学医真菌研究センター教授
1978年東京大学医学部医学科卒、1979年東京大学医学部皮膚科助手、1983年同医局長、1984年三楽病院皮膚科部長、1985年~1988年 米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院皮膚科リサーチ・フェロー、1988年帝京大学医学部皮膚科助教授、1994年同教授、1998年同主任教授、1998年帝京大学医真菌研究センター教授併任、現在に至る。

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