文化とアートのある暮らし

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第7回
~音を織り、織りを聞く 続編~

通常、帯の製作には設計図があり、その設計図を元に織られていくようですが、藤田織物株式会社さんには設計図というものはなく、始めにイメージを決め、革新的なアイデア、そして熟練した織人の感性によって、帯を製作されます。そのため設計図がないからこそ思った以上の帯が生まれることもあるようです。「不安と期待がまた新たな帯を作り出す」とも紹介されていますが、この不確定で偶然性を秘めた状態はまさに現代音楽!とても音楽的ではないでしょうか。

人間の手によって織られるため数ヶ月という時間がかかるようですが、人だからこそできる、複雑で繊細な立体形状の帯が出来上がります。また、その時々の季節感や時代の感性を融合して作られるため、一つとして同じデザインの帯はないようです。

「キュービックシルキー勾配」
製織:岡本美代子氏

「デジタルムーン」
製織:勝山ツネ氏

「ドットモザイク」
製織:箕浦修一氏


織っている時の織機の音はもちろん、出来上がった帯そのものも、まるで音が聞こえてくるかのようで、図形楽譜のようでもあります。
図形楽譜とは、以前「音と天体の狭間で」の回でプラネタリウムの記事を掲載したときにも触れたかもしれないですが、演奏家の想像力を最大に引き出すべく、意図して抽象的な図形によって記された楽譜です。1950年代にアメリカ合衆国の作曲家モートン・フェルドマンによって発案、のちに同じくアメリカの作曲家ジョン・ケージをはじめ現代音楽の作曲家、演奏家に支持され流行しました。

帯から音を?急にこの帯が楽譜だと言っても無理があると思われるかもしれないですが、視覚的なイメージをもとに音を考え、磨いていく作業にこれから進んでいきます。どんな音ができるか、帯をヒントに音を編んでいきます。

文化とアートのある暮らし、と題してコラムを連載しておりますが、日常の生活が少しでも明るく豊かになるべく、今後もアイデアを投稿していきたいと思っています。
最後に藤田織物株式会社の代表取締役、藤田泰男さんと記念写真。

藤田織物株式会社内ギャラリーにて


写真撮影協力、企画協力 :
藤田織物株式会社 京都市上京区下長者町通御前通西入川瀬町584番地19

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