荒野のエッセイスト(映画編)

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第15回
マイケル・ウィンターボトム監督と新作「トリシュナ」のこと

監督は、なぜ今「テス」なのか、という質問に対して、
「原作の舞台となった古きイギリスと現代のインドの姿がよく似ていると思えたから」
と答えている。
イギリス女性だったテスは、インドの田舎町に住むトリシュナと変貌を遂げ、
愛した男に翻弄され、時代の波に飲み込まれ、破滅への道へと歩き出す。
トリシュナに扮するのは「スラムドッグ$ミリオネア」でヒロインの少女を演じたフリーダ・ピント。
「猿の惑星:創世記」でも重要な役を演じ、いつの間にかしなやかでセクシーな女優になった。
心の通わない殺伐としたセックスシーンでは、どこまでも無表情だが、
カメラがその顔にズームインすると、突然、その目から大粒の涙。
何だかすごいシーンだったぞ。

僕が監督に一番聞きたかったのは、
どうやって作品を選んでいるかということ。
様々なジャンルを取り上げ、ハズレがない。
その秘訣は何なのか? その答えは明確だった。
「自分が面白いと思ったものを撮る。それにつきるよ」

映画は半年、一年と長期にわたることも多い。
それでもずっと興味を持ち続けられる題材を選ぶことが重要なのだ。
なるほどな、と僕は思わず納得する。
僕もこれから先、自分が面白いと感じたものだけを書き続けていこうと思う。

「トリシュナ」

日本公開未定 ☆☆☆☆

(は1~5、3つが平均)

愛する男性に対して何の主張もしないいたいけな女性の姿が、今どきの映画としては古めかしくもある、逆に新鮮でもあり……。
カラフルで哀しい映画。

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