荒野のエッセイスト(映画編)

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第2回
「アメイジング・グレース」
ポップスの背骨が浮かび上がる

「アメイジング・グレイス」……エルヴィスのアルバムでは「至上の愛」という邦題がつけられていたが、グレースには「優雅」の他に「神の恵み」という意味があり、直訳すると「驚くべき神の恵み」。
字幕では「神の慈愛」と訳されていた。

アメイジング・グレイス 何と甘い響き
私のような下劣な人間さえ救ってくれた
かつて見失ったものを、私は今見つけた
盲目だった私にも、今は見える

これが一番の歌詞だ。
なんとも下手な訳で申し訳ないが、アフリカ大陸からイギリスへ奴隷を運ぶという非人道的な仕事から抜け出し、神の道に目覚めた男が作った歌と思えば、多少は原作のニュアンスも伝わるだろう。
若き政治家はこの歌に励まされ、時には自分で歌い(あんまり上手くないけど)、奴隷解放への道をひた走る。
持病の内臓疾患の治療のために使ったアヘンの中毒になる等の、負の部分を描きながらも、映画はひたすら心優しく前向きに展開していく。

若き政治家のウィリアム・ウィルバーフォースも牧師のジョン・ニュートンも実在の人物とは実に何ともアメージング。
最近はあまり語られることのなくなった奴隷制度について色々と考えさせられました。

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