知って損はない、働き続けるための心がけ

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第5回
仕事探しの前に――知って損はないヒント

門戸の狭い事務職、門戸は広い販売職

2年前、私が勤務していた大阪市内の会社で、寿退社した20代女性の後任のために、ハローワークで事務職の3カ月間の契約社員を募集しました。すると初日で100人以上の応募があり、2日目以降も連日50人以上の応募があり、慌てていったん募集を中止して選考に入りました。
届いた履歴書を見てみますと、最高齢者の70歳代の方も含め、50歳以上の応募は20人以上いただいた記憶があります。一方、販売員の募集も常にしていましたが、そちらは応募が少なく、なおかつ応募者がいてもなかなか採用にいたらず、苦労していました。

少し古いデータですが、2006年、千葉県商工労働部が1,140人の個人と841法人に対して行った調査「団塊の世代の退職後の就業意識等調査」に現状を知るヒントがあります。
この結果によると、会社員の25%が定年後も継続したいと考えている「事務の仕事」については、企業は7.8%しか必要としていませんでした。一方、「専門・技術の仕事」や「販売の仕事」については、継続して欲しいと考える企業がそれぞれ33.9%と15.9%だったのに対し、継続を希望している会社員は18.8%と6.9%にとどまっていました。

専門職や技術職の仕事は、スキルを持っている人がそもそも少ないので仕方がないとして、販売の仕事は、市場環境の悪化なども影響し、接客がより一層難しくなり、肉体的にも精神的にも厳しいというイメージがあるのかもしれません。
それを裏付けるように、現職種を続けたい人は約80%いる中で、販売職を続けたいという人はわずか60%。販売職と他職種の人との意識の差が如実に表れているといえるでしょう。

成果報酬型に近い、すなわち変動費率が高い企業の中には、販売スタッフは何人いてもいいと思っている企業も探せば相当数ありますし、お客様に喜ばれたり売上が伸びたりした時の喜びを味わえるのは販売職ならでは。もし売上成績が好ましくなくとも、上司から多少のお叱りがある程度で、固定給がもらえるだけありがたいと思えば、ストレスやプレッシャーも軽減されるでしょう。

また、年収が現役時代の半分かそれ以下になったとしたらショックかもしれませんが、やりがいや社会に参加することへの喜びが得られたりするだけでも幸せなこと。さらに会社に社会保険などの負担をしてもらえたら、なお頑張り続ける価値はあるといえましょう(ちなみに、業務委託契約の場合は、あらかじめ社会保険や税金などを考慮して実質的な実入りを計算することが必要です)。

高齢者が扱うほうが好まれる商材やサービスもたくさんあります。例えばマッサージチェアなどの健康器具は、高齢者客が多いため、高齢者から薦められる方がむしろ安心感があるようです。

一度挑戦して失敗したとしても、何も販売経験のない人よりは次の機会が得られる可能性は高くなります。さらに失敗の理由を分析して、それを次の経験に生かそうという意欲があれば、もっと高くなるでしょう。
つまり、固定給がいくぶん低くなることに目をつぶれば、販売職はかなり狙い目ということです。

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