お取り寄せからみたニッポン

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第17回
静岡県・繊細な手仕事の駿河竹千筋細工

どこか可愛く繊細な竹製虫かご

まだ当分蒸し暑い日々が続くのだと思うけれども、それでも夜には秋の虫の声が聞こえる時期になった。都会の真ん中では、虫がいそうな土も草むらもなかなか見かけないが、それでもテラスの鉢植えから鈴虫の声が聞こえる。
子供の頃は、夢中で虫とりをしたものだった。今でも夏の間には、スーパーや100円ショップで、プラスチック製の虫かごを販売している。それもすっかり見かけなくなった9月。昔懐かしい竹の虫かごが欲しくなり、思い立って見つけたのが駿河竹千筋細工の虫かごだ。

静岡県の竹細工は、大昔から安倍川最大の支流・藁科川(わらしながわ)の流域で良質な苦竹(マダケ)や淡竹(ハチク)が自生していたことから、生活用品に竹を用いて発展してきた。武士の内職として編笠や竹カゴが作られ、それが単なる竹細工から美しく成功な千筋細工(せんすじざいく)と称されるようになったのは、天保11年(1840)、岡崎の藩士が静岡に立ち寄り宿屋「はなや」の息子・清水猪兵衛に技法を伝えたのが始まりだといわれている。猪兵衛の元で技術を磨いた門弟たちは、繊細な菓子器や虫かご、花器などを作って広めた。明治時代には、ウィーンで開かれた国際博覧会にも出品され、海外でも人気が高く、昭和の高度成長期で職人が減るまでは、アメリカなどにも輸出されていたらしい。昭和51年に伝統的工芸品に指定され、いまも優秀な技術をもった伝統工芸士が活躍している。

駿河竹千筋細工の特徴は、丸く細い竹ひごで作られること。それが繊細な風情を漂わせる。この竹ひごも手作りだ。
山から採った竹は、まず油抜きを行う。苛性ソーダを入れた熱湯で煮立て、表面のよごれや油を抜く処理のことだ。火であぶって油を拭き取る方法もあるそうだ。青竹はそのままだと腐りやすいが、この処理をすることで長く持つようになる。
その後、しっかり乾燥させ、竹の表面が象牙色になってきたら、ヒゴ作りをはじめる。竹を細く割り、より細くしていく。ひご引きという専門の道具の穴に通して、均質な細さにしていく。これで竹ひごの完成だ。

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