今さら聞けないワインの話

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第6回
黄金色のきらめき シャンパン

偶然が重なったことによってできた食べ物があります。
例えば、チーズ。
大昔、アラブの商人が羊の胃袋で作った水筒に乳を入れて砂漠を旅している途中、乳を飲もうとしたら乳清と白い塊ができていたそうで、それがチーズ誕生のきっかけといわれています。太陽の熱と胃袋の酵素が、うまく作用したのですね。
シャンパンも、偶然できたものの一つ。
17世紀、フランスの「ドン・ペリニョン」という酒庫係の僧侶が、発酵しきっていない白ワインに栓をして放置してしまったところ、それが再発酵し、発泡性を持ったことから生まれたそう。偶然の産物とはいえ、ドン・ペリニョンに私は深く感謝します。

ところで、発泡性ワインが入っている瓶ってセクシーだと思いませんか?私にはあの形が、ウエストが細くてお尻の大きな女性のボディのように見えます。マグナム(1500ml)のボトルなら、なおセクシー!あの形は、気圧に耐えうるために考案されたもので、瓶自体も肉厚ガラスでできているのです。

コルクも、キノコのような形をしているのが特徴です。あのコルクは元々真っすぐなコルクなのですが、3つのパーツから形成されており、ワインが熟成するにしたがって、あの形へと変形していくのです。ちなみに、抜栓した後のコルクは末広がりになっているものが通常です。
また、気圧で飛ばないようにワイヤーで固定されていますね。昔は、たこ糸のようなヒモで固定していたそうですが、湿気やネズミのいたずらによってほどけてしまうことがあったため、ワイヤーが使われるようになったのだそうです。

キャップシール(ボトルの首部分のカバー)が非発泡性ワインに比べて大きいのにも、理由があります。
すべて手作業でシャンパンを作っていたころ、瓶に溜まった澱(おり)をぬく際、噴き出す量が瓶によって違うため、瓶による量の違いを隠そうと、ボトルの肩までキャップシールをかぶせたといわれています。それが機械生産になった今も、残っているのですね。

シャンパンは、味はもちろんのこと、その泡の美しさも楽しむ飲み物であるが故、フルートグラスという細長いグラスに注がれます。泡を楽しむために、グラスの底にわざと傷をつけ、より空気に触れやすくしてあるものもあります。
さらにフルートグラスには、細長いものと、中央に膨らみをもたせた2種類あります。赤ワインを大きなグラスで香りを楽しむのと同じで、長期熟成されたシャンパンの香りをより楽しむために後者のフルートグラス(ビンテージグラス)が作られました。
パーティーなどでは、クープ型の平たいグラスが使われることもありますが、それは手際よく注ぐためで、本来シャンパンを楽しむためのグラスではありません。
同じシャンパンを飲むにしても、グラスによって印象も味もまったく異なるほど、グラスって大事なんですよ。

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