今さら聞けないワインの話

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第18回
安くて美味!ニューワールドワインのすすめ-1

皆さん、ニューワールドって聞いたことありますか?

もしあなたが、
「ワインの産地として有名な国はどこでしょう?」
と質問されたら、フランス、イタリア、スペイン、ドイツなどの国を挙げられると思います。
でも最近、スーパーや酒屋さんでワインを手に取ったとき、チリ産やアルゼンチン産だった経験ってありませんか?同時に、「このワイン安いな…」と思われませんでしたか?
そうなんです。最近、チリやアルゼンチンのワインが日本にたくさん輸入されているのです。

先ほどワインの産地として有名な国を挙げましたが、これらは古くからワインを作っている国々で、「オールドワールド」と呼ばれています。それに対して、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、アメリカ、ニュージーランドなど、以前ヨーロッパ諸国に植民地支配されており、ワイン作りをしている国々を「ニューワールド」と呼びます。
今回は、このニューワールドについてのお話です。

まず、ニューワールドのワインの特徴としては、とにかく格安ということです。
その理由として、チリと日本間ではFTAという貿易協定により、関税がかからないことがひとつ。
また、ヨーロッパに比べて、ニューワールドは敷地が壮大なのにもかかわらず、土地の管理費や人件費が安く済むからです。ワイナリー1ヘクタールあたりの土地も、フランスボルドーの某プルミエクリュなどでは数百万円するところもあるのに対し、南米のワイナリーは千円ほどのところもあるそうです。
もともと人件費が安いうえ、ニューワールドでは手積みはせず、すべて大きな機械で肥料をまいたり、水まきしたり、収穫したりしていますので、労働者数も少なくて済みます。

また、多くのワインは、人工の樹脂製コルク(合成コルク)か圧搾コルク(ブランデーの栓に使用されるガラスの下のコルク)を使用しています。天然のコルクは、コルク自体のコストが高いことと、「ブショネ」が発生する恐れがあることから、格安ワインには使用されません。

ブショネ(Bouchonne)とは、コルク(bouchon(ブション)=フランス語でコルクのこと)がバクテリアに汚染されてしまったワインのことをいいます。コルクに付着した微生物が残存したまま封をされたワインは、その微生物に犯され、決しておいしいものではなくなります。
私たちソムリエは、ワインを抜栓後、コルクの香りをかぎ、テイスティングして、その状態を確かめてからお出しします。

そのブショネだったときのワインの香りは、私は「煎(い)りすぎて焦げた甘栗のよう」と習いましたが、「雑巾を陰干ししたよう」とか「蒸れた新聞紙のよう」などという人もいます。とにかく、これらの表現からわかるように、おいしい香りはしないのです。また、ブショネのワインを口にすると、舌がキリキリとエグ味を感じたりします。
よって、ブショネだと分かったワインは決して提供されません。どんなに高いワインであっても、です。
天然のコルクを使用するとこのようなことが起こり得ますので、天然以外のコルクが多く用いられるのです。

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