私が見つけたライフワーク(2)

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第3回
尾瀬は入り口が楽しみなんです

尾瀬(おぜ)といえば、「夏がくれば…」で始まるあの歌、「夏の思い出」が頭に浮かびます。尾瀬は、この歌をきっかけに全国に知られるようになり、年間35万人もの入山者が訪れる日本有数の山岳観光地になりました。
この尾瀬は、盆地状の高原で、広大な湿原や沼を有し、一般の山岳地域とは異なった独特の景観をしています。山をバックにミズバショウが咲くこの広大な湿原は、初夏の風物詩といわれるほど人気の場所です。
ただ、尾瀬が国立公園に指定され、全体が特別天然記念物に指定されているのは、ミズバショウ以外に貴重な植物が多く自生していることも要因の一つでしょう。

そこで今回は、おなじみのミズバショウではなく、尾瀬の入り口辺りで見ることができる、かれんな花たちを紹介します。
なお、ここでいう入り口とは、歩くのに一番楽で人気のある、群馬県の戸倉を経て鳩待峠(はとまちとうげ)から尾瀬ヶ原までの山道を指しています。通常紹介される尾瀬は湿原の尾瀬ヶ原に入ってからですが、その手前の尾瀬ヶ原への入り口も結構楽しめるのです。

また、湿原の木道は花を見るには、案外不向きな場所です。植生を守るためには当然の木道ではありますが、実際に草花をよく見ようとしても、木道は思ったより湿原から高いところにあり、小さな花に近づいて見ることがなかなか難しいのです。
その点、入り口は、木道はあっても地面から低いところにあることが多く、小さい花でも木道を外れることなく充分に近づいて見ることができるのです。また、歩き始めから尾瀬ヶ原まで終始下りで、標高差が少ないのも良い点です。
普通の山では最初が苦しく大変で、「花を楽しむどころではない!」なんてことがよくありますが、ここは最初が下りなので、元気があるときに、しかも楽にゆっくりと花を楽しむことができます。最初が下りという所はなかなかありません。

ショウキラン

[写真1]ショウキラン

最初に紹介する花は、「ショウキラン」です。花を見ても名前を見てもすぐランだとは分かりますが、「ショウキ」とは何でしょう?不思議な名前ですね。
実は、ショウキは「鍾馗」と書きます。難しい漢字ですが、魔除けの神様として端午の節句に人形として飾られたり、山車の人形に使われたりする神様と言えば、「ああ、あれか!」と分かると思います。
ただ、花のショウキランがなぜ鍾馗なのかははっきりしないようです。私は、花の丸い部分から鍾馗様のギョロッとした大きな目を連想しますが…。

この花のおもしろいところは、見て分かるように、葉が無いことです。葉が無いので、栄養は他から調達します。寄生的ですが、栄養の入手先が菌類なので、腐生植物と呼ばれているそうです。葉が無い割には、薄ピンクのきれいな花です。
残念なのは、少し見つけにくいことですが、植物が密集している所より少し空間があって、陽が当たりにくく、枯れた葉が多い場所で見つけられます。

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