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第14回
クズを救えば日本も救われる?

「くず」から思い浮かぶ言葉は、星屑なら美しい響きですが、糸くず、紙くず、かんなくずになると不要物の音感が漂い、人間のくず、社会のくずに至ってはもういけません。「どうしようもない」ということになって、悪いイメージの典型と言われる始末です。
それと同じ名前だからか植物のクズは良いイメージがありません。

クズの外観はこんな感じですが、他の雑草と争っています
クズの外観はこんな感じですが、他の雑草と争っています


真葛原ほどではありませんが長いクズの壁です真葛原ほどではありませんが長いクズの壁です

クズを知らない人はいないでしょうが、くず餅、くず湯、くず切りなど素朴な食べ物は人気があっても、クズの花が世間の話題になることはあまりないでしょう。至る所にあっても、雑草の一つとしか認識されていません。しかし、クズは由緒正しい伝統的な植物だったのです。その歴史の古さは天下一品、既に日本書紀(天智)に

阿箇悟馬能 以喩企波々箇屢 麻矩儒播羅
( 赤駒の い行きはばかる 真葛原)

と登場しています。

そしてクズは生活の役にも立っていた重要な植物でした。クズの丈夫な蔓(つる)は紐に使われたり、繊維を用いた衣料は葛衣として生活に重要な位置を占めていたのです。ただ、今では生活の衣料品には利用されず、一部に葛布として活用されているくらいですが、漢方としては今でも活躍中です。葛根湯という名前くらいは聞いたことがあると思います。クズの太い根を用いたもので、先日もテレビの健康番組で現役の医師が風邪の引き始めにはこれが一番効くと話していました。

葛布でつくられたコースター

葛布繊維、細い糸は綿で、広い繊維がクズです


クズの蔓は単に丈夫と言うだけで無く、驚きの力強さがあります。写真を見て分かる通り、クズの蔓は空中に長く伸びて浮かんだままで、エイリアンの腕のように今にも動きそうです。普通のロープなら、もっと太い紐でもこれほど長く空中に伸ばすのはマジック以外は無理でしょう。

これを見てもクズの蔓が強靱なことが分かります
これを見てもクズの蔓が強靱なことが分かります




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