らくらくわくわく 山野草見て歩き

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第32回
ユウスゲには夕方が似合う

普通の八重より複雑な形のヤブカンゾウ普通の八重より複雑な形のヤブカンゾウ

このキスゲたちにはまるで名前が違う、ヤブカンゾウと言う仲間があります。ヤブカンゾウは古くから知られ、枕草子や源氏物語にも萱草として既に登場するのです。同じ仲間なのに何故名前が全く違うのでしょうか? これは漢字が中国からやって来たことと関係があるのでしょう。萱草(ホンカンゾウ)と言う中国の花があり、日本にあった仲間の花に中国の漢字名を使ったからとされます。(ヤブカンゾウは古く大陸から渡ってきたと言う説もありますが)


ユウスゲの葉

スゲ類(カンスゲ)の葉


キスゲ等には、橙色と黄色の違いからか萱草の名は付きません。スゲはカヤツリグサ科スゲ属の総称でその葉に似ていて、花が黄色なのでキスゲになったと言われています。昔から知られていたのかもしれませんが、記録としては江戸の前期、生類憐みの令が出された翌年の1695年に発行された『花壇地錦抄』に、「黄菅 葉ハくわんさうのことく、花形も似てひとへ」、「日光黄菅 葉も花形もくハんそうのことく小りん色うこん」と紹介されています。


          ヤブカンゾウ                    ニッコウキスゲ

          ヤマブキソウ                       ユウスゲ


ユウスゲも黄色ですが、ニッコウキスゲと比べると少し色が薄く、レモンイエローなどと表現されることもあります。黄色の花と言っても実際の色には差があるもので、ヤブカンゾウ、ニッコウキスゲ、ヤマブキソウ、ユウスゲを並べて見ると色の違いがよく分かります。ヤブカンゾウは黄色と言うよりオレンジに近い色。ニッコウキスゲやヤマブキソウは少し濃い黄色。ユウスゲが一番優しい黄色です。しかもほのかに甘い香りがするので、やはり夕方が似合うと思います。
キズゲ、カンゾウは昔ユリ科だったのですが、最新の分類ではススキノキ科という耳慣れない科に分類されました。見かけだけでは仲間かどうかは分からなくなっているようです。ただ、新しい分類方法はまだ進化すると思うし、今後また違った分類になるかもしれません。
まあ、ユウスゲにとっては人間の分類などはどうでもよいのだと思いますが、植物って動物と同じように仲間を識別出来るのでしょうか? 出来るとしたら…などと考えるのも面白いですね。

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