らくらくわくわく 山野草見て歩き

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第5回
タンポポと鼓と西行

タンポポは全国に広がっていることを考えても昔から見られていたと思います。しかし不思議な事に古典の世界には全くと言っていいほど登場せず、平安初期の植物辞典にフヂナ又はタナと言う名で出ているくらいだとされています。
そして空白期があり、戦国時代に「タンポポ」の名が登場し、江戸になると園芸植物として流行ったそうです。

江戸と言えば、その時代に創作されたと言われる古典落語にタンポポが登場します。その演目は「西行鼓ヶ滝」。西行法師が摂津国にある鼓ヶ滝で歌を詠んだところ、少し寝てしまい、夢の中で老夫婦二人と孫の3人に歌を直されてしまったところで目が覚めて…という話しです。

最初に西行が詠んだ歌は
「伝え聞く鼓ヶ滝に来てみれば沢辺に咲きしたんぽぽの花」

3人に修正された歌が
「音に聞く鼓ヶ滝に打ち見れば川辺に咲きしたんぽぽの花」

落語だからか有名な歌の切り貼りのようにも思えますが…

茎を切って水に浸けると鼓のようになるのですが、切り方に結構こつがいります


「西行とタンポポ」と言うのは、その組み合わせにギャップが感じられるからでしょうか?そして、鼓ヶ滝はタンポポの別名がツヅミグサ=鼓草と呼ばれているからでしょう。このツヅミグサは、茎を短く切り、両端を少し切って水に浸けると、反り返って鼓のように見えるからだそうで、昔の子供達はこれで遊んだと言います。

花の外側は黄色以外にも多彩な色を持つタンポポ


タンポポの色と言えば黄色という色しか思い浮かびませんが、これもよく見ると多彩な色を持っているのが分かります。花の内側は黄色一色でも外側は黄緑や黒っぽい深緑から暗い黄色や薄オレンジのような色まであって結構楽しめます。
忙しい世の中ですが、ちょっと立ち止まってその辺の草花を見たり、調べたりすると、楽しい発見があるかもしれません。

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