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第8回
〈肺がん〉 臓器別がん死亡数はトップ ただし、早期発見ならほぼ治せる

大切なのは早期発見 年一回のCT検査が有効

罹患数年間約8万人(2004年)に対して死亡者数70,000人(2010年)。1998年以来、臓器別がん死亡のトップになりさらに増加している肺がんは、最も厳しい癌の1つである。

「肺がんと診断された方のうち、治るのはわずか20%程度です。手術ができる方が約30%。手術によって治る方は60~70%。30%×60%=18%で、だいたい20%ぐらいということです。ただこの頃は、抗がん剤や放射線治療等の治療結果もよくなっていますから、上積みはされてきましたね。」と語るのは、肺がんの名医として知られる『がん研有明病院』院長の中川健医師だ。

がんの治療法は、病期(ステージ)によって異なる。病期は病巣の広がり具合で進行度0~4期に分類され、さらに1~3期は、軽いものはA、重いものはBに細分化されている。このうち「手術ができる」のは、どの段階までなのか。

「1期と2期は基本的に手術の適応になります。3期になると、軽いものは手術、重いものは抗がん剤と放射線による集学的治療に、4期は抗がん剤治療が中心です」(中川医師)

つまり、1期か2期のうちに発見すれば手術が可能であり、3期で手術になった人を含めて手術で治る可能性は60%以上もあるのである。

「がん研有明病院の成績では、早期と考えられる1A期の肺がんなら、92%は手術だけで治せます。これは疾患特異的な成績といって、肺がんで手術された方の内、肺がん以外の理由で亡くなった方を除いた数字ですけどね。こうした他疾患で亡くなった方々まで含む成績でも87%は治っています。早く見つけさえすれば、肺がんは治せるんですよ。ですから、検診を毎年きちんと受けることは、非常に大切です」(同)

とはいえ肺がんに関しては、検診を受けていたのに見落とされた、という話も耳にするが。

「それは、一般に行われているX線検査では、小さなものや淡い陰影を示す陰影が分かりにくい上に、陰になって見えない箇所(死角)があるためです。しかしそれでも、検診を毎年受けている場合と受けていない場合では、毎年きちんと受けている方は、検診を受けていない方に比べて肺がんによる死亡の危険度は60%にまで下がっています。

さらに、精度の高いCT検診なら、相当早い肺がんまで、見つけることが可能です。

最近はCT検査機械が普及していますから、たまたまほかの病気でお腹をみてもらい、ついでに胸部を見てもらったら肺がんが見つかったという話はよくあります。

肺がんは進行が早いですが、毎年CT検診を受けていれば、手遅れになる可能性は本当に低いです」(同)

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