名医に聞く

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第9回
〈がん(化学療法)〉 分子標的治療薬が大きな変化をもたらしつつある

効く時代へ そして新しい時代へ

化学療法(抗がん剤や分子標的治療薬による治療)は、がんの治療においては“最後の砦”のような存在だ。たとえば肺がんなら、1期・2期の早期がんは基本的に手術の適応になり、3期になると、軽いものは手術、重いものは化学療法と放射線による集学的治療、4期になると化学療法中心になる。

日本人の死因のトップががんであるということに依然変わりはないが、“最後の砦”がこの間、患者の命を守る力をどんどんつけてきている事実は、一般的にはあまり知られていないような気がする。

「抗がん剤はなかなか固形がん(※)には効かない時代がありましたが、1980年ごろにはシスプラチンという薬が登場し、睾丸腫瘍ならたとえ肺に転移していても70%は治せるようになりました。シスプラチンは他のがんに対しても非常によく効く薬で、化学療法に大きな変化をもたらしたと思います」
と語るのは、『がん・感染症センター東京都立駒込病院』の佐々木常雄院長。これまで1万人以上もの患者とともに最後の砦を守る戦いをつづけてきた、がん化学療法の名医だ。

さらに佐々木院長は続ける。

「重要な薬としては5-FUがあります。日本人は特に消化器がんが多いのですが、5-FUは長い間キードラッグとして使われています。ほかにも乳がん、子宮がん、卵巣がん、皮膚がんなど様々ながんに対して使用されています。
また1990年代以降には、白血病とか悪性リンパ腫についてはかなりよく効く薬も登場して、急性白血病なら半分近くの人は完治する時代になってきました」

そして2001年には、『分子標的治療薬』と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤が現れた。
乳がんの治療に使われているハーセプチン(一般名トラスツズマブ)、肺がん治療に使われるイレッサ(一般名ゲフィチニブ)、大腸がん治療に使われるアバスチン(一般名ベバシズマブ)などは、メディアでもよく取り上げられるので、比較的知られているだろう。
分子標的治療薬を主役に、化学療法は劇的に変わりつつある。

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