名医に聞く

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第11回
〈てんかん〉 不治の病ではない 70~80%は発作のコントロールも可能に

不治の病ではない 徐々に薬を減らし、治癒も可能

治療の主流は薬物治療だ。

「治療薬は20種類以上あり、最近新しい薬もたくさんでてきました。去年ようやく承認された薬も4種類あります。ガバペン、トピナ、ラリクタール、イーケプラーといって外国では20年以上前から使われているのですが、いい薬です。比較的副作用が少なく発作を止める力が強く、古い薬に代わって今は、これらの薬が第一線で使われています。
しかし、日本ではまだ併用薬としてしか認められていません。併用薬としての治験しか済んでいないため、ほかの抗てんかん薬と付加的に使ってはじめて、保険診療の適用になるのです。単独では使えないのが難点です」(同)

薬との相性には個人差がある。医師の腕の見せ所は、こうしたたくさんの薬の中から、最も効果があって、副作用の少ない薬を見つけることだ。

「Aという薬を服用してもらい、だめなら、次はBを、だめならCをというように試していきます。ただ、専門医ならこのタイプにはこの薬が良いというのは、だいたい見当はつきます。見当はつくから、効率よく優先順位を決められるのです。本当に良いかは飲んでみないとわかりませんが」(同)

てんかんは慢性病。服薬は長期間にわたる。

「特発性てんかんは比較的治りやすいので、数年間薬を飲んでもらって、発作が完全におさまっているならば、少しずつ薬を減らしてやめていこうということができます。
一方、症候性てんかんの場合には、もう少し長く辛抱してもらいます。
しかし無事薬をやめることができても、再発する人はいます。症候性てんかんの再発率は20%です。半年から1年に1回程度、脳波検査を含む診断を定期的に受けることが大切です」(同)

治療法には、薬物療法のほか、外科治療、食事療法がある。

※てんかん専門医

日本てんかん学会では、てんかんの「専門医制度」を設け、てんかんの臨床専門医を認定している。
認定条件は「(1)多くのてんかん患者を実際に診療してきた実績と、それに必要な臨床的能力を十分備えていること。(2)日本てんかん学会専門医(臨床専門医){以下、専門医(臨床専門医)と称す}試験に合格すること。」となっている(『日本てんかん学会専門医(臨床専門医)制度に関する規則』第2条より)。
大沼医師は、専門医の認定審査にも携わっていた経験があり、「てんかん治療は専門医に」と提唱している。
だが今のところ、専門医の数は全国で300人ほどしかいない。推定100万人の患者を診るには足りていないのが現状だ。

日本てんかん学会 専門医名簿
http://square.umin.ac.jp/jes/senmon/senmon-list.html

名医のプロフィール

てんかんの名医

大沼悌一 (おおぬま ていいち)

医療法人社団 むさしの国分寺クリニック 院長
医学博士、日本てんかん学会名誉会員(元理事)、独立行政法人国立病院機構さいがた病院名誉院長、国立精神・神経センター武蔵病院 元外来部長、日本てんかん学会認定てんかん専門医、精神保健指定医、精神科専門医。
主な著書には、『知っておきたいてんかんの治療と診断』(2000年 先端医学新書、真興交易医書出版部)の第11章「てんかんの精神症状の診断と治療」(共著)、 『発達障害白書』(2001年 日本分化科学社)の中の「てんかん」、『看護のための最新医学講座』第12巻「精神医学」(2002年 中山書店)の中の「てんかん」、『新技術を用いたてんかん等の診断法と治療法の開発』(共著 2002年 国立精神神経センター発行)などがある。

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