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第14回
〈糖尿病と心血管検査〉 命にかかわる合併症の進行 症状がなくても検査は必要!

最新の320列CTなら、入院なしで検査ができる

聖路加国際病院で威力を発揮しているのが『320列CT』と呼ばれる機械だ。この機械はまだ日本では数台しか使用されていない。

「CTという機械は、簡単に言うと、レントゲンを360度回転させて撮影する機械です。
開発当初は、1回転では1㎜ぐらいの幅のものしか撮れませんでしたが、現在当院で使用している320列CTなら、16cm幅のものが1回転で撮れます。
通常使われているのは64列CTといって、最大で4㎝のものまでしか撮れない機械です。
心臓の大きさは14cm前後なので、1回転ではカバーできません。すると、何回か回転して得たデータをつなぎ合わせることになるため、つなぎ部分の画像は不連続になり、狭窄などをはっきりと描出することが難しいわけです。心臓というのは、単に膨らんだり縮んだりしているだけでなく、ねじれも含んだ複雑な動きをしているのでなおさらです。また、回転数が多くなる分、被ばく量も大きくなります。
それに対して320列CTは、1回転で撮影するので、基本的に画像の連続性が保証され、信頼できる画像を得ることができます。従来はできなかった不整脈の画像も問題なく描出できます。しかも撮影時間は最大で0.35秒です。64列CTだと5-10秒はかかりますからね。320列CTのお陰で、被ばく量もかなり抑えられるようになりました」(新沼医師)

同院では、320列CT以外にも、3T MRIやRI、3D心エコー図装置など、循環器領域に関する画像診断装置が充実しているが、320列CTの最大の強みは、たった1枚の絵で、その冠動脈疾患の有無がわかることだ。

「動脈硬化スクリーニングでは、まず心電図・心エコー図・胸部単純写真の検査を行い、そこでさらに精査が必要な場合に、心臓CT検査を行います。
従来の検査では難しかった、無症状の冠動脈疾患を見つけ出すこともできるようになりました。この意義は非常に大きいと思います。
医師が患者さんの診断をするときは、致命的な病気、もしかしたら死亡するかもしれないという病気から除外していくというのがルールです。
そのルールに従って、特に症状はないけど、なんとなくへんだからと来院した患者さんの心電図検査を行い、このくらいだったら大丈夫かなと帰したら、その日のうちに急性の心筋梗塞になって救急車で搬送されてきたということを、結構経験されている医師は少なくないでしょう。
昔はそれしかなかったし、それでもいいといわれていたのです。
でも今なら、その時点でCTをとれば血管が裂けたとか、動脈瘤が破裂したとか、心臓の血管が詰まりかけているとかが見つけられます。
一部の不整脈など、難しいケースもありますが、それ以外の血管のトラブルは診断できる時代になりました」(新沼医師)

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