旬の野菜と歴史 毎日の食事に取り入れる簡単野菜レシピ

バックナンバー

第21回
旬の「筍」を自宅でシンプルに味わうアク抜き法

4月を代表する味覚「筍」。高級食材のイメージがありますが、今の時期なら国産のものが数百円で手に入ります。しかし、どう処理をしていいのかわからず、結局、水煮されたものを買ってしまう方も少なくないでしょう。ご自宅で茹でた筍は、市販の水煮のものよりも格段に上品な風味が味わえるので、ぜひ簡単な食べ方と共に、トライしてみてください。

■「筍」の歴史

日本には多くの竹藪が存在しており、『古事記』にも記述があり、古くから一部の貴族が食べていたようです。しかし、一般に広く食べられるようになったのは18世紀ごろから。中国から伝わった「孟宗竹」という品種が、食べ方と共に琉球に伝わり、その後、琉球から薩摩藩や島津藩に伝わり、全国化したと考えられています。江戸時代には様々な筍料理が生まれ、カツオ出汁と煮詰める「土佐煮」、わかめと一緒に煮る「若竹煮」、ご飯と一緒に炊く「筍ご飯」、また焼き物や天ぷらなどが当時から親しまれていたようです。原産国は中国で、中華料理にも筍を必要とする、「チンジャオロース」、筍を塩漬けにした「玉蘭片(フィランピエン)」などが今も親しまれています。またラーメンでお馴染みの「メンマ」は台湾に伝わる伝統的な筍の食べ方です。

■「筍」の特徴

筍は鮮度が命と言われており、買ってきたらすぐに茹でるようにしましょう。一旦茹でておくと、冷凍保存できます。筍はアクが強いので、米ぬかや米のとぎ汁で茹でるのが一般的です。アクの正体は、シュウ酸やホモゲンチジン酸と呼ばれるもので、アルカリ性の水と茹でると消失しやすいことから、米ぬかや米のとぎ汁が使用されます。これらが手に入らない場合は、重曹を入れて茹でてもいいでしょう。茹であがった筍は部位によって硬さが違うため、穂先の柔らかい部分は和え物や汁物に、根本から中心部にかけては、煮物や炒め物、筍ご飯などに適しています。一つ茹でるだけでも何通りものレシピが楽しめるのも魅力です。

■「筍」の栄養など

筍はイネ科マダケ属の植物です。竹の地下茎から伸びてくる若い茎の部分で、日本や中国をはじめ、韓国や台湾など東アジアの限られた国でしか収穫できません。栄養価は他の野菜と比べると高くはなく、風味を味わう春の風物詩として楽しまれる傾向があります。独特の風味はグルタミン酸、チロシン、アスパラギン酸といった旨味成分です。また筍を水煮にした後、切り口から白い粉のようなものが出てきますが、これは旨味成分のチロシンによるもので、摂取すると脳の活性化につながり、気力や集中力が増すと考えられているので、洗い流さず、そのままいただくようにしましょう。



コメント